「秋田森の会」会員誌~風のハーモニー~へ寄稿しました

木のある暮らし

SiNG 代表 武内伸文

先日、秋田市雄和の住宅街の一角にあるオークハウスという英国流アフタヌーンティーが楽しめる喫茶店を訪ねた。ログハウス作りで天井の高い気持ちのいい空間で、本格的な紅茶やスコーン(焼き菓子)を味わい至福の時を過ごした。秋田でこのような時間が過ごせることは驚きであったが、それに加えて驚かされたのが、その土地の空気の新鮮さである。隆々と木々が立ち並び、鳥のさえずりが聞こえる。深呼吸をするたびに心と体にエネルギーが充たされていく。懐かしい感覚が蘇る。

2年前に帰郷するまで、英国ウェールズ地方の首都であるカーディフ(人口約30万人:秋田市とほぼ同じ)に2年半ほど暮らしていた。カーディフは、歴史的な町並みが保存された緑豊かな美しい町である。町の中心を流れるタフ川沿いは公園となっており、全長約3.2キロにも及んでいる。公園内の芝生ではラグビーやフットボールの練習、ピクニックを楽しんだり、遊歩道でジョギングやサイクリングを楽しんだり、と市民の憩いの場となっている。そこには緑に囲まれた新鮮な空気とやすらぎの空間があり、人々の暮らしの一部として一体化している。

英国と比べ、日本の「暮らし」で思うことは、日常において「木」を感じる時間が少ないということである。決して緑が少ないわけではないが、なぜか日本では「暮らし」と「木」に距離を感じてしまう。
その理由を考察する上で、英国で感じた以下の3つの観点が参考になると考える。

一つは、「空間の共有」である。英国では空間をうまく共有している。例えば、英国の市街地に多く見られる連棟式住居では、各棟それぞれに裏庭があり、そこでティータイムやバーベキューなどを楽しんだりする。それぞれの敷居は低く、自分の庭だけでなく広い範囲の緑を見渡せるように設計されている。また郊外においても、私有地、公有地に関わらず、フットパスと呼ばれる誰でも自由に散歩ができる。

次は、「田園都市の発想」である。英国は都市計画のレベルで、自然と人間の調和を重要視している。エベネザー・ハワードの提唱した、自律した職住近接を前提とした緑豊かなコンパクトな田園都市が各地に存在し、都市拡大を抑制するための「グリーンベルト」という緑地帯も多く見られる。

最後は、「くつろぎの実践」である。アフタヌーンティーに代表されるように、一日に何度も紅茶の時間を設け、くつろぎの時間を楽しむ習慣がある。日常的には高級ティーセットなどは使わずに、マグカップにティーバッグなどで気軽にゆとりの時間を楽しむ。高緯度の英国では、短い夏の貴重な日差しを待ちわび、多くの人々が芝生に寝ころび日光浴を楽しむ。気取らずに実践する姿勢も、実を重視する英国らしいところかもしれない。

暮らしと木の距離を近づける上で、ハード(インフラ)だけでなく、ハート(気持ち)が大切だと考える。緑が身近にあることだけでなく、それを活用する気持ちが大切である。まずは実践してみよう。近所に芝生があったら、寝ころび日差しを浴びてみよう。森の中で大きく深呼吸してみよう。実践の先に自分なりのくつろぎのスタイルが見えてくるのではないだろうか。

秋田魁新報社 「NPOの風」(6月7日・14日掲載分)

秋田魁新報社 NPOの風(6月14日掲載) 
タイトル:「わらしべ貯金箱」~更なる挑戦~

SiNG(Sustainability for the Next Generations)代表 武内 伸文

「わらしべ貯金箱」には、「モノを大切に使うリレー活動」だけでなく、次の二つのメッセージが込められている。
一つは「民間主導の社会活動貯金の創設」。民間の民間のための民間による社会活動の基盤作りである。現状の行政の助成金による活動には制約があり、民間主導の活動原資による、迅速で、柔軟で、長期的な視野に立った社会活動が望まれる。そのためには、様々な価値観を持つ市民、共通目的を持つ市民グループであるNPO、社会市民たる企業の主体的な活動や連携が不可欠となる。活動が盛んになり、行政、市民・NPO、企業のパワーバランス正常化の一助となればと考える。

もう一つは「価格や物質至上主義への警鐘」である。我々は低価格でいつでも簡単にモノが手に入る便利な世の中を求め、その結果として大量生産・消費・廃棄といったモノあふれの社会を作り上げ、モッタイナイなどの従来の美徳や伝統などを失いかけているのではないか。グローバリゼーションが開発国の産業や伝統を衰退させている悲しい現状に通じるものを、日本を含めた先進国でも感じる。もちろん物々交換の社会への回帰を主張しているのではなく、貨幣はあくまでも道具であることを再確認する時だと考える。お金で美徳は買い戻すことはできず、また失うべきではない。

この「わらしべ貯金箱」は、規模や場所を選ばない。コミュニティレベル、県レベル、国レベル、地球レベルで実施が可能である。コミュニティレベルで行いコミュニティの為の活動資金をためてもいいし、地球レベルで「WA・RA・SHI・BE」を行い、貯金をアフリカの饑餓救済に活用してもいい。ボーダーレスな情報化、ネットワーク社会である現代において、秋田から世界へ情報発信、活動連携を投げかけてみてもいいのではと考える。

秋田魁新報社 NPOの風(6月9日掲載) 
タイトル:モノもアイデアもフロー化が大事

SiNG(Sustainability for the Next Generations)代表 武内 伸文

「わらしべ貯金箱」はチャリティフリーマーケットの一種。自分では要らないが他の人に使ってもらいたいモノを持ち寄り、集まったものの中から気に入ったモノを引き取り、その際の感謝の気持ちを貯金箱に入れ、貯まったお金で社会貢献活動を行うというものである。

「子供が大きくなったから」、「デザインが古くなったから」、「新しいモノを買い換えたから」、「頂いたが使い道がない」等様々な理由で、ぬいぐるみ、スキー、ネクタイ、靴、自転車まで、あるとあらゆるモノが持ち寄られた。中には新品や○万円もするものもあったが、出品者にとっては要らないモノである。モノは使いたい人に使われてこそ価値があるが、各家庭に様々なモノが眠っているのが現状である。それらデッドストックのフロー化を通じて、モノを大切にする気持ちのリレーが広がればと考える。

持ち寄られたモノにはあえて値段をつけない。モノを大切に使うリレーを、価格よりも優先すると同時に、次の使用者へ意識した社会活動への参加を促したいと考えるからである。社会活動は、意識して参加することと、実感することが大切だ。そのためにはどんな形でもフィードバックが必要で、その時はじめて活動者の腑に落ちる。今回であれば、購入予定の自転車タクシーが街に出現し、出品や貯金をしてくれた方々がそれを実際に見て、感じる時である。
振り返れば、この企画自体もデッドストックのフロー化であった。「それならこの場所をお使いください。」という協力者の後押しがなければ、この企画は動き出さずに、今も私の頭の中でもやもやしていただろう。いったんフロー化したアイデアは、多くの賛同者によるサポートと助言によって磨かれ、輝き始めた。思い切ってアイデアを外に出してみよう、この土地にはそれらを受け止め、育てようとする心がたくさんあり、それらの心もフロー化の機会を待ち望んでいるのだから。